1週間後、ピストンを動かしてみると1週間前に比べて少し動きが良くなっています。
ピストンの上死点と下支点のあたりで引っ掛かりがあり動かなくなるのですが・・・
暫くしてもう一度動かしてみると先ほどとは違う場所で引っ掛かり、動かなくなります。
エンジンを上下で分解してエンジン内部の故障個所確認
組付けネジの下にTH23の文字が見えます。
色々調べてみるとこのエンジンはカワサキ製のエンジンの様です。
エンジンの上下部分は4か所のネジで止められています。
1週間前にネジを緩める為の潤滑剤を吹き付けておきました。
使われているネジは十字穴付き六角ボルト
ボルトの頭の対辺8mmで、プラスドライバー用の溝が付いています。
こういうところのネジはプラスドライバーで緩めようとすると失敗してプラスの溝を潰してしまう確率が高いので六角部を利用して外したいのですが、
手持ちの工具で対辺8mmのネジ頭を回すのには
- メガネレンチはスペースが狭くて使えない
- ボックスドライバーは放熱のフィンが邪魔で使えない
- モンキースパナやフリーレンチもスペースが狭くて使えない
スパナを使えばいいだけの話ですが、8mmのスパナを持っていません。
手持ちの工具の中から
プラスの溝を潰さない様に 初めからインパクトドライバーを使い 、外す事にしました。
Anexのねじとりインパクトドライバーに、手持ちの両頭ロングのプラスビットを取り付けて作業しました。
インパクトドライバーの説明書きには、市販のビットにも対応しております。と書かれていますが、その次に両頭ビットには使用できませんと明記されています。
ここは自己責任で手元にある物で何とかします。
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インパクトレンチを使ってエンジンの上下を固定しているネジを取り外す
エンジン本体を両足で挟んで固定し、インパクトドライバーを使ってネジを緩めていきます。
エンジン本体をしっかりと固定し、インパクトドライバーを押し付けて、インパクトドライバーの頭を金槌で力の加減を調整しつつ叩いてネジを緩めます。
ある程度緩めた後はハンマーを使わずに手でインパクトドライバーを回して4本のネジを外します。
自己責任での間違った使い方(両頭ビットを使っている)だったのですが、インパクトドライバーを壊す事も無くネジの溝も綺麗な状態で無事 取り外し出来ました。
エンジン内部の状態は?
ネジが外れたらピストン等を傷つけない様にエンジン上部をそっと持ち上げます。
写真を撮る為にエンジン上部を傾けていますが、実際は真っ直ぐ上にあげるようにしましょう。
引き抜く途中での変な引っ掛かり等も無く、エンジンを上下に分解する事が出来ました。
左側のシリンダー内部を観察すると、円筒の内壁はとても綺麗で、縦方向の傷も無く 変に焼けたような色にもなっていません。
シリンダー奥のスパークプラグの取付穴近辺はカーボン(煤)が固まって付いています。
ここはスパークプラグで栓をして、キャブレタークリーナーを使い、しばらく置いた後 竹串等で慎重に綺麗にします。
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シリンダー内部の焼き付きを想定していたのですが、原因は違うところかもしれない。と思いつつシリンダーをもってクランクを回してみると・・・途中で何か引っかかりがあり回転が止まってしまいます。
2ストロークオイルをクランクシャフト付近に垂らし、慎重に動かしてみると引っ掛かる場所が移動していきます。しばらく動かし続けて 犯人発見?
クランク部分に何か固形物が付いています。
2サイクルオイルを入れたおかげで固形物がクランクに張り付いて表に出てきました。
拡大写真です。
クランクシャフトを止めてしまっていた固形物の他に回りに小さな固形物がいくつも見えます。
犯人?の主犯格の物を綺麗にしてみると、金属片です。
キャブレターから吸い込んでしまったゴミ等ではありません。
改めてシリンダー部を見てみると・・・シリンダーの頭が欠けています。
今更ながらピストンの確認をしてみました。確認する場所の順番がおかしいんですけど・・・
なんということでしょう
シリンダーの頭の部分が欠けています。
シリンダーを横から見ると、
- シリンダー上部が欠損しており
- 上のピストンリングが折れて一部無くなっており
- 下のピストンリングの溝の上の部分が溶けて?溝を狭くしています。
ピストンの上面のカーボンを取り除き、上面端部のバリ取り、2段目のピストンリングの溝修正を行いました。
エンジン下部クランク室内の掃除
エンジン下部にはまだ細かい金属片が多数残っている可能性大です。
保護メガネをかけ、
- キャブレタークリーナーをたっぷり吹き込み
- エンジンを逆さに持ちコンプレッサーエアーでしつこく内部を掃除し
- 更にパーツクリーナーで洗浄
この工程を3回繰り返し、この位しつこく掃除すれば多分大丈夫であろうという判断でエンジンの組み立てをします。
エンジン組み立て、試運転
ピストンの頭も綺麗になり、シリンダー上部(プラグがねじ込まれる近辺)も綺麗にして。エンジンの組み立てです。
組み立て途中の写真が無いのですが、
シリンダー内とピストン・ピストンリングにたっぷりと2サイクルオイルを塗りつけ慎重にシリンダー内にピストンを挿入していきます。
上の写真では上段のピストンリング が付いていますが、エンジン稼働中に回転移動して吸気口や排気口を傷つける可能性がある為上段のピストンリングは外しました。
下のピストンリング1本で頑張って貰う事にします。
ピストンリング部を挿入する際は、ピストンリングを指で押さえて縮めて慎重に傷を付けない様にはめ込みます。
後は分解の逆の手順で組てです。
本当はトルクレンチ(トルクドライバー)を使って各ネジを正規のトルクで締め付けなければいけない所ですが、小さなネジ用のトルクレンチ等を持っていないので 経験値と勘で締め付けました。
外した部品を綺麗に掃除して元通り組付けていきます。
大分綺麗になりました。
キャブレターやマフラー・プラグ・各部カバー等を元通り組付けて一応修理完了です。
この状態で混合ガソリンを入れて試運転してみます。
電気配線やスロットルレバーはまだつけていませんがこの状態でエンジン始動は可能です。
エンジンを止める時は電気配線のプラスとマイナスを短絡(ショート)させればスパークプラグが火花を飛ばさなくなり、エンジンを止める事が出来ます。
スターターロープを引っ張る事数回でエンジンがかかりました。
しばらく暖機運転をした後、キャブレター上部のスロットル部を指で直接操作して回転数を上げたり下げたりしてみましたが、おかしな息継ぎのような状態も無くとても素直に動いてくれました。
一応 修理完了ですが、
ピストン上部が欠けているうえに、上部ピストンリングが無い状態なので、細かいことを考えると、排気量がほんの少し増えて、圧縮比も元とは変わっているのでこのまま使っても大丈夫かどうかは自己責任で判断するしかありません。
後から考えると、下のピストンリングを上の溝に取り付けても良かったのかな?とも思います。
まとめ(落ち)
草刈りの途中でいきなりエンジンが止まってしまい、スターターロープが引けない状態になってしまった草刈り機です。手間は掛かりましたが、部品購入等の費用を掛けずに一応修理が完了しました。
きちんと直す為にはピストンとピストンリングの交換が必要です。
JA(農協)に部品の取り寄せが可能か電話で聞いてみると、その日のうちに一次回答を頂き
部品の価格はピストンが2,700円、ピストンリングが1,100円ですが、部品があるかどうかはメーカーの先の部品購入先まで確認中なので少し時間を頂きたいとの事でした。
約1週間後JAから正式回答を頂き、30年以上前の物なのでピストンの入手は不可です。とご回答を頂きました。
それはそうですよね、使っている物が古すぎます。
JA様その節はお手数をおかけしました。m(_ _)m
この草刈り機は現在リョービのエンジンを載せて一応使える様にしてあるのですが、(理由は次項 落ちの部分で説明します。)草刈り機(刈払い機)も30年以上使えば充分元は取れているので、最新の草刈り機を注文しました。
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最新の草刈り機ってすごいですね、共立の良い物はエンジンの中身が違います
- 4流掃気エンジン(今までのエンジンは掃気経路はシリンダーの横の溝2か所)
- 蓄力式小型iスタート
- スプリング防振
- マグネシウムクランクケース
- 大口径クラッチドラム
- 他・・・
4流掃気システムは共立が特許を取っていて丸山製作所等へのOEM生産?も 行っているようです。
メカ好きにはたまらない構造満載で、言い方は悪いのですが 無駄にかっこ良くなっています。エンジン回りはアニメに出てくるようなロボットの様にも見えます。→あくまでも個人の感想です。
ちなみにホームセンター等で売っている安い刈払い機(草刈り機)のエンジン構造は、今回修理した30年以上前の物とほぼ同じで変わっていません。
新しい刈払い機(草刈り機)については使用してみてから再度紹介するかもしれません。
おち
この記事を書くにあたって、修理経過の写真が少ない事が気になり
写真を撮る為に修理が済んだものを再度分解・組み立てをしてしまいました。(文章に やっちまった感が)
2度目なので気楽にやっていたせいで、残っていた要のピストンリングを折ってしまいました。
これではエンジンがかかりません。圧縮が掛からずスカスカです。仕方がないのでリョービのエンジンを載せた状態で一応使える状態にはしておきました。
新しい草刈り機(刈払い機)を注文してしまったし、30~40年使った物なので普通はもう諦める状態ですが、
父の形見 という名目(言い訳)で、まだこのイセキのエンジンを何とかしようと企んでいます。
(新型の刈払い機を注文してしまったのでもう直す必要はないのですが、機械弄りが好きなおじさんの趣味の領域です)
海外からの通販取り寄せでエンジンの上半分を売っているのは見つけたのですが、これに約5,000円はかけられません。シリンダーキット 32 ミリメートルカワサキ TH23 TS750 KAAZ TM3200K HEDGETRIMMER 刈払機 ZYLINDER ASSY ピストンリングピン E CLIP アセンブリ|Tool Parts| – AliExpress
ピストンリングだけであれば日本国内で代替品はいくらでも見つかるのですが、・・・
以上、
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