現在使っているガレージジャッキのオイル補充のついでに、実家に置きっぱなしで埃だらけの古いジャッキも修理しました。
エマーソン(ニューレイトン株式会社)製 フロアジャッキ(油圧ジャッキ)
型式 EM-03 最大揚程質量2tの物です。
話が長くなりそうなので結論を先に書いておきます。
作業内容は
- 掃除
- オイル交換
- エアーベントバルブ破損 → エアーベントバルブ製作取り付け
- ジャッキ分解清掃
- グリスアップ・組付け
一連の作業を行った結果、ジャッキが素直に下がらない一番の原因はシリンダーロッドの汚れとグリース切れだと思います。
現状確認
・無負荷状態でレバーを上下させると
途中までは上がるのですが、後はいくらハンドルを上下させてもそれ以上上がらない状態です。
この症状は単に作動油不足とエアーの噛み込み(混入)の為だと思われるので修理は簡単です。
・ジャッキを下げる為にリリースバルブを緩めると
途中までは下がるのですが、途中で止まってしまいそのままでは下がらない状態です。
手で軽く押し下げるとグッグッグッと引っ掛かりながら下がる状態(シリンダーがノッキングを起こしている状態)です。
掃除とオイル交換
先ずは全体のホコリ落としからです。
全体のホコリを落とします。
カバーを上に引っ張り上げて外します。
シリンダー周りに油と埃が混ざった物がこびりついています。
汚れを落とすと 下手糞な字でエアーベントバルブとマジックで書いてあります。
この字はたぶん自分が書いた字です。
覚えていないのですが、30年前に自分でオイル補充を行った様です。
上の写真のジャッキの下にあるものがエアーベントバルブです。
キノコのような形をしたゴム製の部品なのですが、ゴムが劣化していて外すときに破損して2つに分かれてしまいました。
ここは後で何か考えることにします。
オイル交換
オイル補充だけでも良さそうな気もしますが、30年放置してあった物なのでオイルは全量交換します。
エアーベントバルブが付いていた所が給油口です
ジャッキを逆さまにして給油口からオイルが出るのを気長に待ちます。
たまにジャッキの傾きを替えて、出来るだけオイルを出し切ります。
後から考えると この時にリリースバルブも抜き取り、もっとしっかり作動油を抜いた方が良かったと思います。
排出したオイルを見ると大分汚れていますが、粘度はまだ保たれています。
ジャッキを元の向きに戻し作動油を入れます。
入れる量は給油口から見えるピストンロッドの少し上までです。
この作動油の量が少ないと途中までは上がっても、
途中からピストン駆動の為の油不足の為、空気を圧縮するだけでピストンはそれ以上動かなくなります。
(油は圧縮しようと思ってもほとんど体積が変わらない為ピストンの駆動力になりますが、空気は圧縮すると体積が小さくなりますので大きな力の駆動力にはなりません)
この後エアー抜き作業を行って、動作確認
ばっちり上昇します。
エアーベントバルブを締め付ければジャッキ上昇に関しての修理は完了です。
が エアーベントバルブを引きちぎってしまった為、何か代用品を考えなければなりません。
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エアーベントバルブの作成・取付
エアーベントバルブの代用品を探すついでに、ハンドルホルダーの根元部分のOリングとリリースバルブのOリングも調達します。(0リング交換は後述)
ホームセンターで悩んでチョイスした物です。
給油口の穴径が8mm位なので、
- 8mmの穴を塞ぐ事が出来て
- 油漏れを塞ぐ密閉性があり
- 耐油性の物
という基準で選んで
車のドアトリムクリップとゴムワッシャーの組み合わせです。
第一案 ドアトリムクリップ+ゴムワッシャー 失敗
適合穴径Φ8のドアトリムクリップと内径Φ8のゴムワッシャーの組み合わせです。
これがハマればばっちりな組み合わせだと思ったのですが
ゴムワッシャーが厚すぎたようです。
給油口に突っ込んでもカチッとハマってくれません。
給油口の上に載っているだけの状態です。
この案は却下
第二案 ドアトリムクリップのみ 栓は出来るが油漏れ
ゴムパッキンでの密閉は諦めドアトリムクリップのみで取り付けてみます。
このドアトリムクリップは首下寸法10mmでそのままではシリンダー内のパイプに当たる可能性がある為、先端を3mm位切り落としました。
給油口へはめ込んでみると、カチッと気持ちよくハマります。
手で掴んで揺らしたり引っ張ったくらいではびくともしません。
見た目は完璧なのですが実際ジャッキを作動させてみると、
ジャッキを下げる時にドアトリムクリップの根元から作動油が漏れ出てきます。
この案も却下
第三案 耳栓 ほぼ成功 ただし少々問題あり
何かほかに良い物が無いか・・・考えた結果出た答えは耳栓です。
早速100均ショップへ行って材質と形状大きさを考え耳栓を購入してきました。
ダイソーの耳栓
材質はポリウレタン
太い方の外径13㎜位です。
反発性の有る製品なので、
給油口に入れるときは指でギュッと縮めて突っ込み、後は放っておけばじわじわと元の大きさに戻り給油口にぴったり密着してくれる筈です。
指でギュッと縮めて早速組み付け
元の大きさに戻るのを待って試運転。
ジャッキを何回か上下させてみましたが、油漏れも無く問題無さそうです。
見た目がナンですが、もともと付いていたエアーベントバルブもキノコ型のゴム栓です。
極力安く上げる方法としてはこの方法で完成としても良さそうです。
但し、一点だけ少し気に入らないことがあります。
このエアーベントバルブ(耳栓)を抜き取る時は、全体を縮ませながらゆっくりと引き抜かないと千切れてしまいそうです。
第四案 ドアトリムクリップ+耳栓のハイブリット 成功
ドアトリムクリップ+耳栓の組み合わせを試してみます。
ドアトリムクリップ+ゴムワッシャーの場合はゴムワッシャーが固い為圧縮せずうまくいかなかったのですが、この耳栓を使えばうまく隙間を埋めてくれそうです。
ウレタンワッシャーの製作
- 耳栓の太い方を厚さ3mm位に輪切りにします。
- 7mmのポンチで中心を抜き取ります。
ポンチも100均ショップに売っています。
先端を切り落としたドアトリムクリップとウレタンワッシャーを組み合わせませます。
ウレタンワッシャーが厚すぎるように見えますが問題ありません。
このウレタンワッシャーは押し付ければペシャンコになります。
給油口へ差し込みます。
上から押し込むとカチッとハマります。
試運転
ジャッキを何度か上下させてみます。
油漏れも無し、ようやく納得のいく物が出来ました。完成です。
しかも、想定外の使いやすい機能が追加されました。
ジャッキを下げた後このエアーベントバルブを少し横に倒してやるとシリンダー内の圧縮された空気がシュッと音がして抜けます。
*注意
圧縮空気を抜いた後は必ずエアーベントバルブを元通り押し込むようにします。
元通り押し込まずに何度もジャッキの上下をさせていると突然ポンと音がしてエアーベントバルブが飛び出し、同時に油が噴出し、油を浴びることになります。(なりました)
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エーモン工業さんで、ホンダのドアトリムクリップは、1666 という型番で売られていたのですが、現在は 3864 という型番に変更になっているようです。
ジャッキが下がらない不具合の修理
おじさんの今までの経験上
こういう単純な構造の物は大抵 分解・掃除・組付けで直ります。
目視では油圧シリンダーのロッド部からの油漏れは無さそうです。
油圧シリンダー本体のパッキン(オイルシール?)がダメになっていた場合は諦めますが、それ以外は掃除で何とかなるはずです。
Oリング交換
先ずはリリースバルブと ハンドルホルダーの根元部分のOリング交換です。
Oリングのサイズは?
シャフトのOリングがハマる溝部分を測ってみると
- 溝の中の直径 8mm
- 溝の幅 2.5mm
- シャフトの外径 10.8mm です。
Oリングの規格で言うと P-8 で良さそうです。
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材質がニトリルゴム(NBR)なので耐油性も問題ない筈です。
ぼろぼろにひび割れしたOリングを外して新しいOリングを取り付けて組付けします。
ガレージジャッキ分解・掃除・グリースアップ・組付け
ガレージジャッキのシリンダー以外の部分を分解・掃除・グリースアップ・組付けを行います。
細かく書いていくと話が長くなりますので要点を絞って書いていきます。
修理後に撮った写真なのでジャッキが綺麗になっています。
最初につまづいた部分です
前後のキャスター取り付け部とジャッキのアーム根元部分のナットを緩めようとしたところ、このサイズに合うメガネレンチやスパナがありません。
しかもスプリングワッシャーの錆も手伝ってか かなり固く締まっています。
19mmのメガネレンチでは緩すぎナットの角をナメてしまいました。
17mmではハマりません。
ナットの対辺距離を測ってみると18mm位です。???
対辺距離18mmって初めて見ました。
こんな規格があるんですね、知らなかった。
もしかしたらインチサイズのネジかもしれません。
こんな中途半端なサイズの物は他の物で緩めるしかありません。
こんな時はモンキーレンチを使うか、バイスグリップを使ってハンマーで叩くか、パイプレンチで緩めるか、
案はいろいろあるのですが、今回は100均ショップの便利工具【フリーレンチ】を使いました。
このレンチは掴む物のサイズに関係無くネジを緩めたり閉めたりする事が出来ます。
レンチの開き部がぶらぶらして使いにくいのですが便利な物ではあります。
このレンチでナットを掴み、軽く手で押さえ、ハンマーでレンチを叩いてナットを緩める事が出来ました。(100均ショップの製品なので最悪の場合壊れても 懐具合の損害は少ないです)
この作業後フリーレンチを自己保持機能・ラチェット機能付きに改良しました。
其の他の部分は大きな問題無く分解する事が出来ました。
分解して、摺動部の掃除・グリースアップ
軸を見ると片当たりしている様ですが、大きなバリや傷はありません。
一応軽く耐水ペーパーで水研ぎしておきました。
油圧シリンダーの根元部分の穴にバリ?が有ったのでヤスリで削り落としました。
軸を見ると右側だけが当たって痕が付いています。
分解途中で軸用止め輪が2個破損しました。
片方は折れてしまい
もう片方は開いたまま閉じなくなりました。
錆びて弱くなっていた様です。
この部分は新品に交換します。
部品単位での掃除、摺動部のグリースアップをして元通り組付けて完成です。
試運転で動かしてみると大分動きが良くなりジャッキを下げる時も自重+バネの力でほとんど戻ります。
実用には問題のないレベルまで直りました。
但し、最後の5cm位の処で動きが止まり、軽く押してあげないと完全に下まで下がりません。
大事な所を掃除し忘れていました。
油圧シリンダーのロッド部です。
パーツクリーナーでロッドの汚れを落とし、ジャッキの動作確認をすると
→ 動きが余計に悪くなりました。
次に潤滑油をスプレーしてみると
→ 多少動きが良くなりましたが、弄る前の方が動きがスムーズだった気がします。
次にグリーススプレーを吹き付けて、何度かピストンを動かしてグリースをなじませた後確認すると
→ ジャッキが一番下まで自重+バネの力で下がる様になりました。
ひょっとしたら分解・掃除・グリースアップ・組付け の工程は無駄だったかもしれません。
ジャッキが素直に下がらない不具合は
ピストンロッド部の掃除+グリースアップだけで直る可能性が高いです。
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これでほぼ修理完了で新品に近い動きをするようになりましたが
実はまだ問題があり、無負荷でジャッキを下げる時に少々ノッキング現象があります。
作動油がかなり汚れていたので、汚れの塊か何かが悪さをしていると思われます。
具体的には、リリースバルブ内部付近の汚れが原因だと推測します。
油圧ユニット内のフラッシング(汚れ落とし)をしてやれば新品に近い動きになると思います。
現実的な方法としてはピストンをフルストロークで何回も動かして内部の汚れを剥がし(作動油の中に浮き上がらせ)、作動油交換という工程を2~3回行えば良いでしょう。
しかし、作動油の在庫もあとわずかしかない為今回はここで修理完了とします。
まとめ
ガレージジャッキの動きが悪いときは
- 作動油の量を適正な量に補充して
- エアー抜きをきちんと行い
- ピストンロッド部の汚れ落としとグリースアップ を行えば大抵の不具合は直ると思います。
いろいろ遠回りな作業をしてきましたが、結果として最低上記3点を行うだけでも良かったような気がします。
以上、
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